6回目の生物の大量絶滅と多剤耐性菌 その2

我々の身近にも、人間の活動により、生物に変化が起こってきた事例は存在します。大量絶滅のような壮大なドラマではありませんが、近年、我々獣医師が直面している問題として、耐性菌の問題があります。

細菌研究者が、細菌の培養中にアオカビを混入させてしまい培養に失敗しました。多くの研究者が捨ててしまうであろう失敗作から、何故 アオカビ周辺に細菌が増殖しなかったのかと疑問を持ち、その研究に取り組んだ研究者アレクサンダー・フレミング。これが、20世紀最大の発見の一つと言ってもいい抗生物質ペニシリンの発見につながります。

抗生物質は、新しい世代の薬剤へと使用頻度が変化してきましたが、抗生物質が、現在においても治療に欠かせない薬剤の一つであることに変わりはありません。

しかし、最近、そんな抗生剤の効果に変化がみられるようになってきました。

数年前まで、皮膚病の治療で抗生剤を使用しても、耐性の問題を引き起こすことはそれほど多くありませんでした。ところが最近、抗生剤に反応しない症例に出会うことが増えてきました。近年、国際皮膚病学会でも、耐性菌の問題が大きく取り上げられるようになってきた、とのことです。

当院では、今のところ、そのような症例も多くなく、また、それらに対して、今のところ、何とか他の方法でうまくコントロールできていますが、それに対する対処法は、病院ごとに考えも違うでしょうから、ここでは触れないでおきます。

毎年、多剤耐性結核菌で亡くなる人がいると言いますが、これは、抗生物質の使用法の間違いからくる問題と言われています。体の中から結核菌を完全に否かならせるためには、何週間か抗生物質を続けなければなりません。しかし、体調がよくなると、医師から処方された抗生物質の服用を途中で止めてしまう。これが、多剤耐性結核菌を増やす原因といわれています。